「野菜の値段」
あるマルシェでの話。僕の話ではないけども、自然栽培の野菜を見て、「高いわね、安くしないと売れないわよ。」と一言発した年配の女性。よくある光景であり、僕もよく経験した。
大根一本を僕は450円で売っていたのだけど、本当によく言われた言葉である。ただ、僕は受け流していた。取引なのだから、高いと感じれば、買わないし売らないだけの話。難しい話ではない。
一応、そのマルシェの農家さんの立場で考えてみる。彼はキャベツを300円で売っていた。
キャベツを100玉作るとして、その苗を作るのに管理時間を考慮すると、約24時間。つまり丸3日。青虫取りの時間を考慮してだ。資材原価は1000円程度。
この苗を畑に運び、定植し、栽培管理する。消えて行くもの、虫食い含めると、1日1時間で約16日ほどの時間を使って栽培する。つまり丸2日。これを出荷し、販売するとすれば、あと3日は必要となる。資材原価、必要経費は3000円程度か。
合計すると、労働時間8日、資材経費4000円。これをキャベツの値段に換算すると、最低でも10万円は欲しい。つまりキャベツ1個1000円だ。これでトントンになる。
現実にはキャベツ1個300円が限界。頑張っても400円。それでも高いと言われる。
なので、安くしようとすると効率化が必要となる。100玉ではなく1000玉作るとか。しかしその1000玉を誰が買うのか。本当に全部売り切れるのか。その問題にぶち当たり、100玉しか作れない。
農協という仕組み、流通という仕組みは野菜の値段を安くした。だからスーパーで野菜を買えば安いのが当たりまえだ。だが、自然栽培や自然農法の野菜はその流通に乗らない。国や行政は助けてはくれない。
自然栽培や自然農法でも流通を作れば良いと軽々しく言わないでほしい。どのくらいの費用がかかるのか、流通はボランティアではないから、利益が出なければ維持出来ない。安い野菜を求められれば、流通も利益が圧縮される。宅急便で送れば、下手すれば価格の半分は送料になる現実。
だからと言って高く買って欲しいとかいう話ではなく、価格の妥当性についての主張を、農家に押し付けないで欲しいと思う。
「高いね」の一言は、彼ら自然栽培や自然農法の農家自身の価値を低く見てますと宣言しているようなもの。だから、まずは、その農法や手間、想いなどを農家から聞き出した後に、評価して欲しいと思う。
それでも高いと思うのであれば、「この値段は高い。」と宣言してもらっても構わない。
ただし、高いと思ったのが、その農家の価値から判断しての場合なら、甘んじて受け入れるけども、自分の稼ぎから考えて高くて買えないというのならば、それは自分の価値を下げる行為なので、そのように発するのはやめたほうがいいだろう。
値段とは実に色んなものを評価する基準となるものだ。
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#流通 #原価