[imagelink] 「畑の硬盤層」
ちょいとだけ専門的なこと。
畑を掘って行くと、必ず30センチほどしたところで硬い層にぶつかる。これを硬盤層という。
まず、一般常識の話からしてみる。
この層はトラクターなどの重機が何度も通っているために出来る層である。そのため畑や田んぼなどでは、必ずこの層にぶつかるので、この層を壊さないと根が張らず、作物が出来にくい。
この層の下には豊富な栄養があり、この層を壊すと作物は大きく育ち、水はけも良くなるので、自然栽培などでは大麦などの根が深い作物で壊すのが良い。
さて、この説は、必ずしも正確には事実を伝えていないと、僕は思う。
まず硬盤層はどんな場所にも存在する。自然界においては、むしろこの層がないと作物は生きられない。それと、この層の下には確かに栄養素はある。だが、それは必ずしも作物に取って必要とは限らない。もう一つ。大麦では硬盤層は簡単には壊れない。
さて、硬盤層というものがどういうものか説明しておくと、ここは粘土質の土であり、微生物は少ない。この層は自然界においては重要な意味があり、本来、雨による浸水で水が溜まる層である。植物はこの層がないと生きられない。これが正確であろう。
なので、僕が無肥料栽培で土と対峙してきた結果、分かった事を幾つか書いておく。
硬盤層には3種類ある。一つは自然界に存在する硬盤層。これは一見硬い層なのだが、植物の根からしたら大して硬くはない。ここに水があり、植物へと供給している。
もう一つは耕盤層。これは重機などが何度も踏み固めたために出来る層。この層はせいぜい15〜20センチ辺りで存在する。この層には微生物が生息できないために、非常に硬い層となり、水すら吸い込まなくなる。さらには、植物の根も伸びるのを嫌って、根の深い作物は成長が悪くなる。畑にも確かにあるが、住宅地の庭に多い。
最後の一つは、肥毒層。肥料分、特に消石灰やリン酸が溜まり込んだ層。この層は自然界に普通に存在する硬盤層に化学物質が染み込んだ結果であり、酸素を手放したリンや石灰はかなり硬い層となって、植物の生息を阻害する。耕盤層が肥毒層に変わる事も多い。
なので、掘ってみたら硬い層があったからと、慌てて壊そうとすると、それが自然界にとって必要な硬盤層であった場合、作物への水補給路が断たれ、天気が続くと、常に潅水しなければ枯れてしまう畑を作り出してしまう。
大麦で壊すという話はよく聞くが、麦農家の僕の感覚では、大麦ぐらいでは、耕盤層や肥毒層は壊れない。自然界に存在する硬盤層に関しては、もちろん壊れない。当たり前だ。水補給路としての大切な硬盤層など、植物がわざわざ壊すはずがないからだ。
ちなみに、耕盤層や肥毒層の下にはカリウムが豊富な土があるという定説がある。カリウムがあると根の生育が促進され、植物の生育も良くなる。これは事実であろう。山の鉱石が雨の侵食で流れてきて大地が出来たのだから、当然と言えは当然。
しかし流亡しやすいカリウムが残っているのは、耕盤層があり、水が流れ込まないからであり、水が地中深く流れ出したら、カリウムも流亡するのではなかろうか。根は通るが、水は溜め込んでくれる自然界の硬盤層だからこそ、このカリウムの意味があるということ。
さて、この3つの見分け方と壊し方はセミナーでジックリお話するので、ご興味のある方は是非参加して欲しい。