[imagelink] 「巻かない白菜」
白菜にとって人に食べられることは本意ではない。
白菜の葉は内側に曲がり、結球する事で白菜らしくなるが、本来は葉っぱであるのだから光合成をして炭素化合物を根に供給するために外に広がる方が自然である。
なのに何故日が当たらない様に結球し、決して青くない真っ白な葉になるのか。これにはそれなりの理由がある。
白菜は寒くなるとオーキシンという植物ホルモンの作用により、葉の外側の細胞が肥大化して内側に曲がる。葉は内側から分蘖して増えて行くが、外の葉が曲がるために中に留まることになる。しかもどんどん増えて硬く巻く。
実は硬く巻くことにより、白菜の中心にある茎の先端、つまり花を咲かせ、種を付ける成長点を守ろうとしているのだ。作物であろうが、食べられることが本意ではなく、種を残すことが最大の目的であるからだ。
内側の葉は光合成が出来ずに白くなる。そうすると、虫の好きなアミノ酸や糖が出来にくい。糖やアミノ酸がないので窒素によってたんばく質を作る必要もないから、窒素も対流せず、虫にとってはなんの魅力もなくなる。だから、虫は白菜の中心にまで触手を伸ばさない。もちろん硬く巻いているというのも虫からのガードにもなるし、霜が降りても枯れない。
さて、無肥料だと、白菜は巻きにくいと良く言われる。種蒔き時期を早めても巻かない事は良くある。
それは、土の中に窒素分が少ないのが最大の原因である。葉は窒素分が少ないと大きく成長しないからオーキシンも分泌せずに内側に曲がらず、外に広がる。そうすると、新しい葉は押さえ込まれない。
内側の葉は光合成をするので青くなり硬くなるため、人が食べるのには適さないが、一部の虫たちにはエサともなり、虫食いが始まるという障害が発生する。
さて、悪いことずくしのようだが、実はこちらの方が自然な植物の姿である事は見逃してはいけない。
実は、結球する白菜の祖先というのは見つかってはいない。これは、そもそも人の都合で品種改良を重ねてきた結果だからだろう。
白菜の葉全てが光合成することによって、白菜は炭素化合物を作る。それが糖やアミノ酸になり旨味になる。それに窒素分が少ないから、甘味はしっかりと残る。
虫がやって来て食べ始めるが、窒素分が少ないから酷く食べられることはなく、白菜は虫たちと共生始める。葉を食べた虫は糞をし、リン酸を供給する。
虫は白菜によって生き延びる。そして冬が来て、虫たちはいなくなる。白菜は糖を持つので、寒さに耐えながらも枯れる事なく冬を越し、春になれば周りの葉をいとも簡単に枯らして、トウ立ち、つまり花を咲かせて種をつける。そういう仕組みになっているのである。
もちろん、誤解して欲しくないが、結球する白菜の方が進化的には先に進んでいる。無肥料栽培で結球させるというのは、ある意味高い技術力だし、栽培なのだから結球した方がいいに決まっている。虫にも食われず、冬を越せるし、鍋には最高の食材だし。
でも、自然の摂理を考えると、結球しないからといって失敗だと思わない方がいい。本来はそれが自然な形であり、自然栽培や自然農法では結球しないことは、結構あると思っていい。