[imagelink] 「尻腐れ」
今の時期に良く訊かれる質問が、トマトの尻腐れ対策。ネットで調べるとカルシウム不足なので、石灰を施肥するとある。無肥料ではそうはできないので、どうしたら良いか?
分からないでもない質問なのだが、考え方を根本を変えるべきだと僕は答える。尻腐れが起きないようにするにはという部分的な対処療法ではなく、もっと自然界の大きな話が必要だからだ。
確かにカルシウム不足で尻腐れは起きるが、じゃあ何故カルシウム不足が起きているのか。苦土石灰を撒かないからという泡沫的な話は置いておいて、要は土の中のミネラルバランスがトマトに向いてないということである。
考えてみれば、トマトの原産地は火山灰土壌のアンデス。弱アルカリ性土壌の作物である。では日本はといえば酸性雨による弱酸性。弱酸性の土壌ではカルシウムは少なく、そのためにリン酸を植物は吸収しにくくなる。
だから、この地でトマトを育てること自体が間違い(笑)。そう言ってしまえば身も蓋もないが、これは致し方ない。事実だから。
だからこそ、無肥料においては、土壌の状態というのがいかに作物に影響するかをしっかりと知るべきであり、土壌づくりというのが大切であるということになるのである。
ホームセンターで土を買ってくると、最初は育つが、やがて土壌の酸度が変わって来て育たなくなる。あるいは、その前までは苦土石灰が撒かれた土壌に急に何も施肥しなくなり、尻腐れになる。または、耕作放棄地の一年目、二年目は雑草の腐植分で育つが、三年目から発育不良に陥る。
それは、その作物しか育たない土壌を無理やり改良しているのだから致し方ないことなのである。しかし、自然農法では追肥という足し算ができないので、さてどうしたら良いのかとなるのである。
何度も書いていることなのだが、土壌のミネラルバランスをとるのは、人間ではなく植物の方である。だから、植物にやってもらうしかない。それがコンパニオンプランツなのである。
僕がよくやるのは、バシルと春菊。どちらもアルカリ性土壌を好む。アルカリ性土壌はカルシウムが若干多く尻腐れになりにくい。なので、この辺りを栽培すると、自然と土はアルカリ性土壌に近づいてくる。近づくといっても僅かだが、少しでもアルカリ性に傾けば、カルシウムが吸収し安くなって尻腐れが減る。
もちろん短期的な方法もある。例えばトマトの端の方の根を切る。主根から30センチほど離れたところをザクザクと切る。すると新しいひげ根が出て、新しい根圏微生物も増え、土の中の養分を吸収しやすくなる。
あとは余分な葉を落とす。実を育てている葉以外の葉を落とすことで、余分なミネラルが果実に集中して尻腐れなどが起きにくくなるということだ。
どっちにしろ、何かを足すという足し算はしない。むしろ引き算。コンパニオンプランツも土の栄養分を植物に与えるという意味では引き算。事の解決には引き算で対応した方が根幹治療に結びつくものである。