2013.03.10
決して後退しない学習ーAnkiを使うとどうして一生忘れないのか? 効果的な学習法など |
学校・教育 |
記憶術 理解は記憶の最大の援軍であるが、記憶もまた、ある水準を越えると、理解を助けることができる。
このことは、とりわけ独学者にとって朗報だ。
理解を助ける直接的な支援=誰かに教えてもらうことが難しい独学者にとって、他に打つ手があるということだから。
しかし理解を助ける域にまで記憶が達するには、正確かつ高速に想起することができる必要がある。
流暢に引き出せる知識は、忘れにくく、妨害されにくいだけでなく、応用されやすい。
思い出すことを要しないほど定着した記憶は、認知リソースをほとんど消費しない。
したがって、そこで浮いた分を複雑な処理に回すことができる。
例えば、掛け算の九九をマスターした人と、7×6を7を6回足して計算する人が、同じ方程式を解くことを想像しよう。
九九をマスターした人は、ただ解くのが速いだけでなく、正確であり、より楽により複雑なものを処理できる。
7を6回足すのに費やされるワーキングメモリや注意(これも重要かつ限りある認知リソースだ)を、別のことに用いることができるからだ。
単純な事項を反復訓練するだけで、文章理解や問題解決のような、より複雑な行動のパフォーマンスが上がることがあるのは、こうした理由からである。
記憶に最適なスケジュール
しかし、覚えることに望外の効果があるとしても、その覚えることこそ難所ではないか?
繰り返せばよいというが、多くのことを覚えようとすれば、そのループの期間は長くなり、最初に覚えたことを忘れてしまっている。
忘れたことを覚える、覚えたことを忘れる、の繰り返しで、ある程度以上は先に進めない。
効果が感じられない。やり甲斐がない。続けるのがつらい。やめる。そして忘れ続ける。ついには、何もやらなかったのと同じになる。嫌になる。学ぶことなんてムダだ、二度とやるもんか。
対処法を示そう。
まず知っておくべきは、《忘れるのは、人間の仕様である》ということである。
そして、それに打ち勝つことができるのは、繰り返すことだけである。
さまざまな記憶の方法(方略)が存在するが、我々に必要なのは、見世物としての記憶術や記憶のスプリント競技に必要な、円周率を何桁も覚えるような少種類大容量タイプの記憶術ではなく、いろいろな種類の事項について長期に維持しメンテナンスできるような記憶方略である。
ここでいう記憶のメンテナンスは具体的にいえば、繰り返し思い出すことで、記憶の内の優先順位を上げて、取り出しやすくすることを意味している。
では、多くのことを覚えようとすれば、そのループの期間は長くなり、最初に覚えたことを忘れてしまうという問題はどうすればよいのか?
忘却するという人間の仕様を、もう少し詳しくみることで対処法がわかる。
時間が経つに従って忘却し続けるが、その忘却の度合いはゆるやかになっていく。
この忘却スケジュールに照らすならば、復習のタイミングもまた次第に間隔を広げていくことで最適化できる。
このスペースド・リハーサルと言われる復習タイミングの方法については、何度か書いてきた。
復習のタイミングを変えるだけで記憶の定着度は4倍になる 読書猿Classic: between / beyond readers [imagelink] [imagelink] 1年の計はこれでいく→記憶の定着度を4倍にする〈記憶工程表〉の作り方 読書猿Classic: between / beyond readers [imagelink] [imagelink] 単純な暗唱ものから文章理解から技能習得に至るまで有効な方法だが(そしてほとんどの記憶術/記憶方略と併用可能である)、最大の欠点は〈面倒くさい〉ことである。
最初のうちはいいが、学習をはじめて何十日か経つと、復習すべき項目が〈1日前覚えた項目〉〈3日前覚えた項目〉〈7日前覚えた項目〉……と積み重なってきて、しかも復習までの期間が広がっていくわけだから、とっさに今日はどれを復習すればいいかが分かりにくくなる。
だったらコンピュータに復習タイミングの管理を任せられないかとは、誰しも考えることだが、スペースド・リハーサルを取り入れた単語帳ソフトSuperMemoが1985年に商品化され、その後Ankiというオープンソースでマルチプラットフォーム(Windows、Mac osx Linux、FreeBSD、iPhone、Android、ノキアのMaemo(マエモ)で動く)のソフトが登場した。
Ankiによる後退しない学習
Ankiの使い方は簡単である。
覚えたいコンテンツをダウンロードなり入力するなりしておけば、カードの表が表示され、それを見て裏側を思い出す。
正解だったか間違いだったかを、クリック/タップすれば、正答率に基づき、最適化されたスケジュールで(当然、間違えたものは...